Haruyoshi Nagae

空と宇宙の狭間を通ると光るらしい

ある孤独を拭えぬ夜だった。 心臓の位置がいつもと違うように錯覚する。 遠い他人というものから発せられる、優しくも鋭い言葉を飲み込むように、私は柔らかく撫でられていた。 星を最後に見た

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秋日

凪いだ風は遥か遠くのススキまで揺らそうという頃、私は黄金の幻影を間近に見た。そのゆらめきは有機的、生き物であるのには違いないのだが、すでに還ったように静かにさざめくのだった。 柔らかな触り心地を

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変幻自在

溶けたように見えた君の髪が透明な赤、あるいは押し寄せる波のように輝く。なぜか無重力になびき、地に足のつかない軽やかな動きで私の目を回すのだ。 君に触れたこともなければ口を聞いたこともない、君は不

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朝、吐息と雨

2021.12.18 久しぶりの雨だった。 長い時間を刻む時計の音を聞きながら、まどろみを溶かすように朝を迎え入れる。 布団からはみ出した足が少し冷えていた。 少しずつ身体が目覚めるのを待ちなが

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幻想知覚数え歌

娘の住まう世界にはおそらく人がおらず、彼女は日々、五感、あるいは六感への刺激に感心するばかりだった。 ただ、その刺激を記憶することはなく、感情の芽生えることもない。彼女が涙を流すのは、何十年もあとのこ

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鏡の目

朝食のパンを切っていると、知らない音が聞こえてきた。それまで聞こえていた虫の声や車の音がぼんやりと滲むように広がって、音に全身を包まれたような気持ちになった。 彼女はよくこんな場面に出会う少女だった。

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